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著書【宝石の裏側 vol.5】

宝石の裏側-第5話- 【通信販売】

通信販売

 

宝石の裏側-第5話- 【通信販売】

 

  テレビショッピングにせよ紙上ショッピングにせよ、販売を企画する側のビジネス理論はどこにあるのか、また同じくこれを利用してジュエリーを買い求める消費者の理論は何か、ということに注目してみましょう。

・・・つづく。

宝石の裏側 -Vol.5-
ジュエリーリフォームデザインスタジオ やまやくらぶ

 

 

 


 

 CASE A~C -出来事-

 

 Case A:本日のお買い得商品のご案内をさせていただきます。本日は大粒の本真珠ネックレスのご紹介です。珠の大きさが8.5ミリから9ミリ、約42センチの長さに仕上げてあります。大粒でしかも巻の厚い、すばらしい光沢の本真珠ネックレスで、本日の企画のために九州天草の真珠養殖場から特別に買い付けました。価格はズバリ、198.000円です。(TVショッピング・土曜日の午前10時半)

 Case B:今回のお買い得商品は2カラットのダイヤモンドリングです。プラチナの6本爪に留められているラウンドブリリアントカットで、すばらしい輝きの天然ダイヤモンドです。しかも2カラットという通常ではなかなか見られない希少価値のある品物です。この価格がなんと48万円です。数に限りがございますのでお早めにお申し込み下さい。(TVショッピング・土曜日の深夜1時)

  Case C:それではここでテレビを御覧の皆様に耳寄りなご案内を致します。今回は四国宇和島の真珠養殖場から直接買い付けました本真珠ネックレス、大きさが6.5ミリから7ミリで全長が長く42センチ。糸の代わりにステンレスワイヤーを使用して珠をつなぎ、しかも珠と珠の間にシリコンのパッキンを入れることで珠ずれを防いでいます。お値段はお買い得価格の38.000円です。日常着ける機会のとても多い真珠のネックレスです。どうぞこの機会にお買い求め下さい。(TVショッピング・昼)

・・・つづく。

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EFFICIENTLY -効果的に- 

 

 通信販売における売り手と買い手にとっての共通な論理は、『見えない』という事です。売り手にとってはお客の姿が見えず、買い手にとっては品物の姿が見えない。この『見えない』事を利用して、売り買いのビジネスを組み立てるのが通信販売なのです。

  それでは売り手はどのようにこの『見えない』事を利用して販売を企画するのでしょうか。通販を通して売り手は企画商品の一定量を短期間に売り尽くし、それによって営業利益を上げなければなりません。つまり売り手は活字や電波メディアによる、瞬時にしてしかも広域にわたる宣伝効果を狙って、効率的でリスクの無いビジネス展開を目指すことになります。
 そのためにアイテムの的確な選定、リーズナブルな価格、信頼を創り出す演出が重要となり、これによって売り手は『見えない』お客を『見えない』商品と結びつけようと努力するのです。

・・・つづく。

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 ITEM -アイテム-

 

 通信販売の企画は次のような条件を満たしながら実行されます。
1:商品アイテムは、日常的に定番化されているものであること。

 Case A~Cのように真珠のネックレスとダイヤモンドのリングは視聴者にとってジュエリーの中で最も知名度の高いものです。またこれらは日常の使用回数が他のジュエリーを抜きん出ているので、ほとんどの女性が持ちたいと願っているジュエリーであり、また必要とするジュエリーです。

  デザインの面から見れば、フォーマルに装うときも、カジュアルに楽しむときも、違和感が無く使用できるジュエリーとして誰からも抵抗無く受け入れられるモデルの商品であるわけです。これらの理由で真珠とダイヤモンドは通販用の企画商品としては格好のアイテムとなっています。しかもこれらはグレードや大きさなどを比較的明確に表示できるので、商品が『見えない』ながらも視聴者に視覚化されやすく、了解されやすいアイテムということになります。

・・・つづく。

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 MASS -多数の-

 

 2:通販で企画される商品は、一度に特定の量を完売することが可能な商品でなければならないこと。

 つまり通販で紹介された商品は、それと同じ物が一定量製品化できなければ、瞬時に多量の買い注文を受けることが出来ないのです。一度に同じ品質で、同じ価格のアイテムを数十点またはそれ以上揃える事は、希少性やオリジナル性を本質とするジュエリーの世界では極めて難しいことです。
 厳密に検証すれば異質なものを、デザインを同じにし、同じ価格の中に束ねてしまっていると言わざるを得ません。この行為はジュエリーの本質に矛盾し、本来あるべき価値に逆行することになりかねないでしょう。しかしこれがビジネスとして組み立て可能なのは、『見えない』という通販独特なキーワードが存在するからです。

  『見えない』商品のビジネスが成立するためには、もともと求めようとしている商品の品質について、買い手は厳密な判断ができず、品質や価格についても寛容で妥協的にならざるを得ません。したがって販売の企画者を信頼せざるを得ないという、暗黙の前提が潜行しているわけです。
 通販では現物を見ることが出来ないからこそ、品質での些細な違いがあるにせよ、同じデザイン、同じサイズ、同じ価格の商品を多量販売することが可能となるのです。そしてジュエリーの中でも特に真珠とダイヤモンドは、量販の可能なアイテムとして最適なのであります。それらは同じサイズの形状と、ほぼ同じ品質のグレードで一定量を生産できるからです。

・・・つづく。

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 CHEAP -安い-

 

3:通信販売の商品価格は一見して視聴者に安いと判断されるものでなければならないこと。

 なによりもまず視聴者が既に日常の生活圏で見聞きし、認知している該当商品の価格よりも安いと判断される必要があります。したがって通信販売の企画ではまず価格設定が先行して、それに品物の品質が合わせられます。
 はじめに価格ありき。つまりいくらの商品を通販として企画するか、これが通販ビジネスの出発であるのです。そしてこの設定された価格に見合う商品が採算ベースに合うように設定されることになります。

 通販のこの事情は、ややもすると持続する価値を本質としているジュエリーの存立基盤をないがしろにするものです。ジュエリーは素材が持っている品質的価値とデザインや作りの技術的価値がベースとなり、それに営業利益が加わり商品価格にいたるのです。しかし価格設定が先行する通販において、ジュエリーの品質は従属的にされ、企画商品の価格に見合うようにからげられてしまうのです。そこに流れているトーンは品質に見合った価格ではなく、価格に見合った品質でしかないということです。

  Case A~Cのダイヤモンドのリングも真珠のネックレスも、宝石専門店や百貨店の宝飾売場では見つけにくいような価格の安い商品であります。しかしその安さというものは、品質の良い商品が通常価格より安いというのではなく、安い商品がさらに安いという程度のものです。安い商品はもともと高価に販売できないから安く販売せざるを得ないのです。つまり価格破壊が品質破壊を伴いながら進行していくことになりかねないのです。
 通販のジュエリーがたとえ買い得品であっても、それが所有者に満足を与えることが出来るのは次のような条件を満たしている場合です。

①それがオリジナルであり、他には見当たらない場合。
②送られてきた物が魅力的で個人的に愛着が湧く場合。
③一般的な市場価格よりも通販で買い求めたほうが安い場合。
④商品の品質が思っていたよりも良い場合。

 ところが通販ではたとえ安い価格が視聴者の購買欲を引き付けたとしても、以上の条件をことごとく満たすことが出来ません。①の独創性など初めから通販に求める視聴者はいないにせよ、送られてきた商品の価格と品質に不満がなく、しかも購入者の嗜好に合致するものを手に入れるのは稀でしょう。
 通販の企画者が通販商品を制作するにあたって、素材の買い付け価格を抑えるために現地買い付けをしたり、製造コストを下げるために工賃の安い海外に製造工場を持ったとしても、企画される通販用商品の価格の下限は市場価格の範囲を出るものではありません。つまりメディアを通して如何に安さを連呼できたとしても、そのような価格のものは巷に溢れているものです。買い手が安く求めた事に満足できるのは、せいぜい巷の宝石売り場より安い感じがした、という程度でしょう。しかしこの僅かな満足も、通販という宿命とでも言うべき、没オリジナル性と品質の粗悪性によってまたたくまに帳消しにされてしまうのです。

・・・つづく。

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 FAITH -信用-

 

4:通販の売り手は、買い手にとって実際に見ることの出来ない商品と買い手とを信頼によって結び付けなければならないこと。

 この場合の信頼とはなにか。それは『価値については了解するが、品質については売り手に任せる』という意味の信頼です。しかし人は一瞬にして消えゆく電波の映像をどうして信頼できるのでしょうか。
 街の老舗でさえ数十年も同じ場所で営みを続けて、初めて信用を得るにいたります。しかも日常の商品の中でも特に生涯にわたって愛用するジュエリーは、購入してからのアフターケアが重要となってきます。例えばネックレスの糸のつなぎ直しや、リングのサイズ直し、クリーニング、新品仕上げなど、購入後に宝石店に出入りする必要性は極めて多いわけです。

  こうしたアフターケアとは程遠いところに位置している通販業者が、視聴者から信頼を獲得するためには、信頼というものを演出し、創作する以外にありません。そこで通販の企画者はテレビタレントやキャスターだけでなく、社会的に知名度の高い作家や評論家までも繰り出して、またそのような出演者が揃っているスタジオで通販商品の紹介を挟み込むのです。さらにその場での出演者の同意や感嘆を利用して、視聴者の安心感を増幅させ、信頼を獲得しようとします。

 ところが出演者は、商品の内容とその後のアフターケアについてまったく責任の無い立場で発言しているのです。彼らは出演料をもらっていても、紹介というわけではないので、商品の行く末につては責任も感知しないのです。
 いずれにしても通信販売による売り手と買い手の取引が成立するために、価格は買い手が自己判断し、品質については売り手に任せるということが、暗黙の了解事項になっていなければなりません。品物が申込者の手元に届いて、その品質に不満を感じたとしても、それはありえる事としてあらかじめ自己了解しているはずの事にすぎないといえます。

・・・つづく。

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TARGET -ターゲット-

 

5 通販のターゲットとされるお客の性格は物臭人間、多忙人間、朴とつ人間であること。

 ジュエリーを買い求めるのは車や電化製品を買うのとわけが違います。機種と定価がどの店でも同じである工場生産品と違い、ジュエリーは商品と価格の判断が一律にはいきません。商品の価値や価格の判定がきわめて難しいジュエリーを買いに宝石店へ足を向けるのは、日用品を買うときのような気軽さではないので、誰にとってもおっくうな事です。
 宝石を買うことに慣れていて、宝石店や宝石売り場に気軽に行ける人でも、最初のきっかけをつかんで慣れるまでには、おっくうで、面倒で、気のすすまない事であったはずです。世の中の万事に慣れきっている人でも、こと宝石と宝石店に対しては誰も皆、物臭になってしまうものです。

 この物臭人間の対極にせっかち人間がいます。この種の方々は、とにかく忙しいようです。そして自分がどのくらい忙しいかを周りの人に雄弁します。しかし、ご存知のように本当に多忙な人は忙しがらないものです。
 それはさておき、宝石を上手に買うのにせっかちは禁物です。物事のうわつらに触れて全てを把握したように錯覚するのが、せっかちの本性です。せっかち人間は物の良し悪し、言葉の奥義、事態のよみができません。同じように物臭人間も物事の本質をつかむ努力をおこたる種だといえます。つまり物臭とせっかちは同類種の表裏といえます。そしてこれらの人種は、通信販売の売り手にとって格好のカモなのです。

  さらにまた、朴とつなタイプの人間も通販の買い手として好ターゲットにされます。世の中にはジュエリーを光り物と称して、これをいっさい身につけず、中には嫌いだという人さえいます。かのピューリタンのように宗教的信念から朴とつを善と考える人もいれば、生まれながらに身を飾る事には無縁のような人もいます。
 しかし朴とつタイプの人は、ときとしてショウウィンドウや店頭にやってきて、じっくりと言葉すくなに見ていくことがあります。前述の物臭タイプやせっかちタイプと違い、朴とつタイプは事物の価値を見定める才能をもっています。彼らは自らは飾りたがらないが、子供や知人にジュエリーを贈る事には、不器用だが理解があるように思えます。そして記念や思い出に遺すものとしてジュエリーが最適であることも知っているようです。この様な元来無口の朴とつタイプにとっては、店頭で見栄と喧騒の無駄な会話をするよりも通販ショッピングのほうが手っ取り早いことになります。

・・・つづく。

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CUSTOMER -客-

 

 ジュエリーを買い求めようとする人の中で、どの様なタイプの人が実際に通信販売を利用しているのでしょうか。テレビ視聴者や紙上広告の読者の中には多くの潜在的な買い物客がいます。この潜在的な買い物客の中で、まず自分のおしゃれにこだわりを持つ人と、現物を見て実際に手で触らなければ買うことがないという人はこれらメディアの誘いに決して乗りません。そして行きつけの店を持っている宝石愛好家も、宝石売り場での下見や比較が気軽にできるので通販を利用することはほとんどありません。

 通販を利用するタイプの人間は、どちらかというとメディアやタレントを信用しやすい人で、特に行きつけの店やセールスマンとの交流を持たず、自分のおしゃれに特別なこだわりを持っていない人です。また世の中のことには妥協的で逆らわず、平均的な生き方が一番イージーだと考えているタイプの人でしょう。

  つまり宝石については初心者で、社会生活上は妥協的であり、生き方の面では突出しないことを美徳と考えている人たちであります。そしてこの様なタイプの人は現物を目の前にしたとき、自分で判断する努力をしません。つまり価格で品物を買い、品物で価格を判断することをしない、また判断したくてもできないのです。『はじめに価格があり、その価格が品物の価値である』と考えているからです。品物の価値はその品物の価格でしかないものとみなしています。

 これではジュエリーの本来的価値を無にしてしまいます。すでに述べたようにジュエリーの価値はその購入価格以上のものです。その稀少性、それへの愛着、それに付加されるエピソードなど、購入者はまず品物そのものに惚れ、共鳴することが肝心であります。そしてこの主観的で個人的な価値が購入価格を超えるジュエリー本来の価値といえます。まず品物の判断をして、その後その価格に納得すべきです。
 しかし通販の買い手は、品物の判断をはじめから放棄しています。品物についての判断は売り手側にオマカセなのです。

・・・つづく。

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 BORING -退屈な-

 

 通販では買い手にとって3つのマイナス条件が存在します。

1:価格の交渉ができない。
2:商品の品質を吟味できない。
3:自分にフィットするかどうか確かめられない。

 これらのマイナス条件は、ジュエリーを買い求める際に必要な基本的三条件をことごとく無化してしまっています。つまり商品のクォリティー、デザイン、加工技術を検証することがまったくできないまま買い物を完了することになります。ところが不思議にもこのように買い手にとってデメリットな条件をもつ通販が、ビジネスとして成立しているのです。

  それでは通販ビジネスを成功させるために、売り手はどのような企みを実行するのでしょうか。通販の企画者はまず、①没個性的ジュエリーの選定、②没個性的人間の対象化、③一過性の信頼を演出すること、を課題として設定しています。
 この結果、巷には銀製のバラの花形の留め金具がついたパールネックレスや、プラチナのティファニー爪に留められたダイヤモンドリングがそこかしこと点在することになるのです。
 このようにして没個性的なジュエリーが電波や紙上を賑わしながら、没個性的人間に利用されて、没個性的な宝飾文化を形成していくのです。通販の現場で主役を演じた『信頼』も、その仮面がはがれるのに何日もかかりません。信頼の仮面がはがれると、やがて品物の包み紙がはがれるように、その中で演出家たちによって増幅されていた価値も薄れていくのです。

・・・つづく。

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 CASE D~E -出来事-

 

  Case D:40代の婦人。自分の子供が小さかった頃は宝石店に行くのがおっくうで、よく通販を利用していました。プラチナのサファイヤリングが7万円。18金のダイヤモンドピアスが39.800円。ブルーカラーのパールネックレスは7万か8万円で買ったものです。どれも飽きてしまって使っていないので作り替えの相談に乗ってください。

  Case E:30代の保険外商員の女性。会社のパーティーで最近パールのネックレスが流行っています。自分が持っているものは8ミリのピンク系で、照りも良く結構気に入っています。仲間たちもグラデーションのものや、ゴールデンカラーのもの、バロックパールのものなど様々に着けてきてはしゃいでいます。
 この人気にのって先日、友人の一人が9ミリのネックレスを通販で購入しました。はじめはその大きさを自慢してうかれていましたが、やがて集まりの回数が増すごとに、黙して沈んでいくようになりました。まわりの誰が見てもそのパールは黄ばんでいてクレヨン色のように照りの無いネックレスだったからです。

・・・つづく。

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 APPEAL -アピール-

 

  通販ショッピングの狙いは、一般的で平均的な商品を『秀品』として買い手に信用させることです。そのためには有名人をその商品の紹介者やアドバイザーに仕立てる必要があります。
 そもそも商品そのものが秀品であればそのような演出はいりません。要するに通販ショッピングがビジネスとして成功するかどうかは、その商品の品質やデザイン、加工技術にかかっているのではなく、演出力にかかっているのです。

  一定数量そろえることの可能な平均的な商品を『特別なもの』に思わせるためには、メディア効果を利用して視聴者の目や耳に訴え、商品の魅力と信用度を確信させなくてはなりません。そのために最も効果的なのは有名タレントの登場とその推薦のセリフです。商品そのものを実際に手にとって検証できない視聴者はタレントの言葉を信じる他ありません。商品そのものの善し悪しについて比較し、吟味し、検討するチャンスを与えられないのが通販であるといえます。
 商品が手元に届いた後は、『この程度かな』という妥協と返品手続きの面倒くささとで、いくらか不満足な商品であったとしても送り返す人は極めて少ないのです。

・・・つづく。

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 CONTENT -実体-

 

 ジュエリーを自分の真の持ち物にするためには、品物そのものに自分が納得しなければなりません。そして品物の真実性に迫るには、品物そのものと対決する必要があります。つまり品物の実態を読むことこそが自分の真の持ち物を選ぶ基本の作業であるといえます。

  消費者が通信販売を利用してジュエリーを買い求める場合、そこで紹介、宣伝されている商品に付着している売り手側の演出物をはぎ取ってみる必要があるでしょう。値引率、美辞麗句、有名人の登場、ブランド名、保証書や鑑定書にいたる様々な演出を度外視し、商品そのものの実態と自分にとっての適応性を吟味することです。ですが、こと通販においてはこの作業を推測で行う方法しかありません。

・・・つづく。

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 EXAMINATION D~E -考察-

 

 ジュエリーは持ち主を得てはじめて命を与えられます。持ち主の内面性の表出として、またつける人の身体の延長として、それは呼吸を開始します。するとそのジュエリーは、主人のために魅力を十二分に発揮しようと努めるのです。ジュエリーはこのような関係になってはじめて単なる商品ではなく『価値』として生まれ変わるのです。

 Case D、Eのようにジュエリーがそのオーナーに飽きられたり、またオーナーが自分のジュエリーをつけたくなくなってしまう時、そのジュエリーはもはや単なる物品になり下がってしまっています。ジュエリーが単なる物品になると、それはオーナーとの間の心的交流を失い、オーナーを充実させる力がなくなってしまいます。

  食べ物や短期の消耗品と違って、ジュエリーは時間を重ねながらその価値をますます発揮していくものであります。進行する時間の中で価値を持続し続けるものが本当のジュエリーです。
 Case D、Eのように時間とともにその価値が色あせてしまうようでは、ジュエリーとしてのパワーが発揮されることはありません。また、通販においても買い手は、価格については自分で判断できるが、ジュエリーの内容の善し悪しについては自己判断ができず、他人任せで無責任にならざるをえません。

・・・つづく。

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 FADE -薄れる-

 

 通販で買い求められたジュエリーは、実際に品物が買い手に渡った後になってはじめて、その品質の善し悪しや価格について周辺のジュエリーと比較されます。そして世間の冷たい批評に晒されるのです。しかし買い手は購入にあたって商品の内容を判断する術がなかったという理由で、自分と自分の買った商品の関係を弁護したり、購入の正当性を主張することはできないしそれはむなしい。そしてやがて時間の経過とともにそのジュエリーと自分との出会いのストーリーは風化していくことになり、また当然そのジュエリーの持つパワーもダウンしていくのです。
 買い手がジュエリーを購入する際に『飽きずに長く愛用できる』と確信できれば、たとえ通販の商品であっても、ジュエリーの『価値』を手に入れることができるはずです。しかし『飽きない』と確信できるジュエリーを通販ショッピングで見つけ出すのはとても困難なことです。

  通販ビジネスでは商品が買い手に渡った瞬間に売り手側のビジネスは完了します。通販の売り手はビジネス完了後の商品にはほとんど責任を負いません。
 ところで、一般的に買い手はジュエリーを手に入れた時から、そのジュエリーとのストーリーを開始します。買い手は手に入れたジュエリーが持っているイメージや価値を大切に保持し、育て、守ろうとするはずです。つまり買い手側は自分の物としたジュエリーとの関係を持続し続け、終了することはありません。
 しかしながら通販ショッピングにおける買い手は、買い方に主体性と責任感を持たないために、購入したジュエリーに対するこだわりも、愛着も持たないのです。そのように買い求められたジュエリーは価値を増幅するどころか、持ち主との関係をますます希薄にしていくことになります。事実、ジュエリーを買うときの動機や買い方のストーリーは、時間が経つにつれて重大な意味をもち、時にオーナーを勇気づけもすれば、落ち込ませもするのです。

・・・第6話へつづく。

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